あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 渡辺淳一

渡辺淳一「遠き落日」上・下/角川文庫・集英社文庫

 

あの頃映画 「遠き落日」 [DVD]

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遠き落日(上) (角川文庫)

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遠き落日 (上)

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 世界の医学界で活躍した野口英世の一生を、渡辺淳一氏が伝記小説として手掛けたものである。方や、渡辺氏自身による創造の面も描かれており、野口英世の実際に経験した出来事の詳細部分等いまだに知られていないものが含まれているのもあって、やむを得ないところではあるが、想像が含まれる割に野口英世の生き様は人並みでなく、不器用な面や男ならではのだらしなさを、渡辺氏によって上手く表現されている。ここに描かれている野口清作という人物に映る光と影の姿がまさに具体化された形でまとまっており、この小説の中で映し出されている。坪内逍遥の作品に登場する「野々口精作」という人物が、英世にとって、自身を否定された思いが強く、彼をさらに追い詰めてしまったのではないのであろうか。彼特有の疎い金銭感覚や恋愛感覚で、彼にとって人生の汚点を作ってしまった。幼児期で左手に火傷を負って、彼は得たものや失ったものは計り知れない。彼の持つ野心は故郷の福島からアメリカへと、彼の気持ちが、世界にまで及んだ。ヨネ子への純愛に失敗したのは、英世の心をさらに傷つけたのは間違いない。一方でヨネ子としては英世のことを不気味に思い、疎む結果となり大きな亀裂となっていったのは無理もないとは思う。火傷と失恋を実感し、彼の中で見出したアメリカ行きはまさに、彼にとっての大きな処世術となったであろう。特に、故郷の福島における母・シカへの愛情が、彼の支えとなっていたわけである。伝記小説というものに関し、あまり出回らないのかとは思った。戦国時代等の伝記ものであれば別であるが、近現代の人を扱った小説というのはめったにないのかもしれない。これは小生個人の意見であるが、他を探せばいくらでもあるかもしれないが、実際はどうなのか、わからない。

 渡辺氏は医学出身の小説家であり、代表作である「失楽園」等、耽美的な小説で有名である。野口英世の一生を同氏の表現によって描かれるのはとても驚きである。氏の作品には人間の不純さや不器用さを生々しく表現しているが、小生はあくまで「遠き落日」という作品のみでしか感想を述べていない。「失楽園」等の作品では共通しているのかはこれからではある。あまり生意気に述べるつもりは決してないが。

 

人物・野口英世 野口シカ 血脇守之助 山内ヨネ子/TOHKI-RAKUJITSU