あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 石原慎太郎

石原慎太郎太陽の季節」(新潮文庫

 

太陽の季節 (新潮文庫)

太陽の季節 (新潮文庫)

 
太陽の季節

太陽の季節

 
太陽の季節 (1957年) (新潮文庫)

太陽の季節 (1957年) (新潮文庫)

 

 

主人公である竜哉とヒロインである英子との恋愛物語が、石原慎太郎氏による熱い語りのごとく、描かれている。竜哉がいかに英子という女性のことを本気で好意を抱くようになったのかが彼のこれまで感じなかった熱い心が芽生えたというべきであろう。拳闘クラブに入ったのも同じであるといえる。彼が前に活動していたバスケットボールという団体分野において、彼にとってはグループ活動という全体主義から孤立を感じ、個人競技という分野に置き換えることで、彼にとってのやりがいを見出せたと思う。二人の出会いは共にこれまで感じえなかった何かを得たわけである。ここに出てくる、障子紙を破くというシーンについては、二人とのセックス描写を抽象的に表現しているが、日本の生活文化をあえて禁断の場面に用いることにより、読み手の想像性を高めさせてくれる。抽象的な禁断のシーンを表現するという狙い、まさに益荒男な作家・石原慎太郎としての描写技量をなしている。このシーンに関しては、一時期マスコミでの議論にもなっていたらしい。一時期ドラマにもなっていたが、その際、画面には障子その物が人間の手か何かで破くという表現となっていた。ラストシーンにおける竜哉の心理には、男としてのプライド、何が起きても動じないという気持ちを思わせるのだが、裏を返すと不器用な男であるという一面もうかがえ、壮絶なカタルシスを物語っている。石原氏が経験した戦中・戦後経験で生まれた美学の一つであるともいえる。

本人の弟である故・裕次郎氏はいち早い有名であるが、慎太郎氏の政界進出の際、裕次郎の兄です、とアピールをしていたことがあった。ともにエネルギッシュの持ち主である。ヨットの経験はまさに孤独な執筆活動の上では、机を船のように舵を取るかのようにと、想像してしまう。方や東京都知事として活躍する石原氏であるが、三島由紀夫と肩を並べる愛国主義であるとは思うが、アメリカに対しては横田地域の返還を思わせる以外は何も思いつかない。ただ、中国政府への批判は大いに印象があり、かの小泉純一郎氏と同じ肩を並べるものである。知事の傍らには作家業の力は健在であり、この先も新たな作品を生み出す期待は大きい