あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 唯川恵

唯川恵「あなたが欲しい」/新潮文庫

 

あなたが欲しい

あなたが欲しい

 
あなたが欲しい (新潮文庫)

あなたが欲しい (新潮文庫)

 
あなたが欲しい―恋は妖しく、時に罪深く (TENZAN LIGHT SELECTION)

あなたが欲しい―恋は妖しく、時に罪深く (TENZAN LIGHT SELECTION)

 

 

 恋愛小説では有名な作家である唯川恵氏の作品であり、小生は同氏の作品を読んで非常に衝撃的な気持ちを持ってしまった。登場人物の人間関係や考え、心理的なものと、すべてにおいて、人間の持つ建前と内面の部分を余すところなく、語りつくしているものである。女性の揺らぐ、いや人間すべての心そのものがいかに、非常にもろいものであるかの如く思い知らされたといってもいいであろう。結局は誰が得をしたかというのもでは決してない。登場人物全員が敗北者であるように思える。主人公である理沙子が犯した「罪」について、いきさつや考え方で結果として罪悪感を抱いてしまったわけであるが、気が付けば、周りも個々で過去や現在に至り、相手を裏切る「罪」を犯しているが、それを隠して今日に至ったわけである。この隠し通した「罪」がいつしか情緒不安定の人間によって、「罪」が強引に暴かれてしまうのも、無理もないといえるであろう。この人間にとって、信じていた当時の恋人に裏切られ、親や社会から突き放され、いつしか本人に大きな傷となった心のままで今日を生きてきたので、何をしても報われることのない生き地獄を味わっており、友人どころか両親にまで救いの手を差し伸べることない、完全な孤立無援でいると、どこかで最悪な事態に陥ることもある。この最悪が物語の中で起きてしまったのである。物語なら良いとしても、もし仮に実際の社会において、一度でも起これば確実に取り返しのつかないものにはなるであろう。また、その人の今後や人間関係にも大きく及ぼしかねない。この物語において、単に「恋愛」という分野にとどまるものではないと言ってもよいであろう。人間というものの生き方、理性、理想とは何のかというものを感じる。恋愛のカテゴリーにとどめておくとすれば、単なる参考本という程度で済むかもしれない。しかし、人間の生き方、特に置き去りにされた人間の存在というものを考えると、決して安易なものでは済まされるものではない。理沙子ようなの生き方をしているのであれば、彼女のラストシーンをじっと感じ、心を潤す気持ちで読めばよいと思う。だが、置き去りにされた人間の生き方としては、学校等のいじめや両親による虐待等、不遇な生き方を余儀なくされていることを考えると、彼らの傷を癒してあげることが大事である。と言っても単に過保護するというのではなく、心の闇を解放してあげるべきではないかと思う。この物語の部分で、不思議に思った。終わりで置き去りにされた人間が少し経過してから前向きでいる様子である。この点に関し、友人を持っていることであれば、たしかに前向きでいてもいいかもしれない。であれば、どこかで助けがあっても良いと思うが、もし仮に孤独な男性でいたらどれ程の空しさを感じていたであろうか、この点では読む人により、共感する一方で、オヤッと感じるとでは価値観が異なるであろうかという考えである。それにしても、人物の個性は我々の社会において、同じ立場と言える面はあるが、彼らの内心となると、なんともえげつない気持を抱いてしまう。人の心がガラスのごとく、刃のごとく、何ともセンチメンタルなものである。そんなセンチメンタルな彼らを唯川氏により、手掛けられた恋愛作品である。そう考えると、理沙子のように、この人でいいのだろうかと思いとどまる人にとっても、不遇な生き方を余儀なくされた人間たちにとって、いかに人間関係をよりよくやっていくかという作品にもなるかもしれない。他人に振り回されて生きているということ、前者や後者に共通するといえる。他人による自己中心的な考えにより、人生を振り回される、他人に作られた道で、他人だけの自己満足で済まされる様なことは決してあってはいけない。両親であろうが、友人であろうが、同い年であろうが、自分で強い反対意志を持たないと、大きなマイナス要因につながりかねない。そう考えると、自らが、他人の考えにとらわれていないかを再確認し、自らの気持ちに自信を持って生きているということが出来るようにしなくてはいけない。ビジネス面においてはある程度受け入れるべきであるが、今後の自らに向上心を持たせるならば、積極的に行うべきである。

 唯川氏の手掛けた作品から「思い知らされた」という表現では悪いので、教訓になったものは非常に大きい。同氏の作品による主張が恋愛をはじめ、すべての分野において、大変心に刻んだ作品であり、人生勉強にも役立てられるといってもよいかもしれない。

 

人物・榊理沙子 亮 氷川幹也/I WANT YOU