あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 リチャード・バック

リチャード・バックかもめのジョナサン」(新潮文庫)

 

かもめのジョナサン 完成版 (新潮文庫)

かもめのジョナサン 完成版 (新潮文庫)

 
かもめのジョナサン (1977年) (新潮文庫)

かもめのジョナサン (1977年) (新潮文庫)

 

 

 この作品の主人公であるかもめのジョナサン・リビングストンはいかに飛ぶことについてのこだわりを自ら厳しく追及していた。彼の中で生まれてくる邪念や軽蔑の扱いにもひるむことなく、ひたすら自らに抱えた目標を超えることにより、自らのものにしていく。自らで強く考えたことであり、この考えがただのかもめという殻を破ることで超越した存在で、能力を持った、生まれ変わりのかもめを目指すというものは自らに課せられた大きな課題であり、自らの居場所づくりとなる。大きな目標を掲げることにより、大きな生きがいを持つことが抱えた目標となるわけである。だが、評議会の者たちはすぐれたかもめどころか、平和的で平凡で何も味気のないかもめしか認めず、ジョンのようなかもめに対しては、おきてを破ったと、排他的な考えしか持っていない。ジョンにとって、彼らのような集団を狭い価値観に閉じこもった、全体主義的な固定概念をもった集団でしかない。組織的に一方的な考えでは、非常に耐えがたいという気持ちを持つことには無理もないジョンは孤独になりながらも、飛び方を独自で磨くことにより、また、チャンとの出会いもまた大きな励みとなり、更なる気持ちを強めていった。彼はいくつか悪戦苦闘になりながらも、彼についてくるようになったかもめが増えるようになった。中でも評議会方の追放を受けたかもめも含む。あの集団に疑問を感じたジョンの姿に共感したかもめたちがどのような気持ちでいたであろうか。やがては道を究めたジョンは天上のかなたへと消えてしまうが、幾多の苦しみを乗り越えてきた彼の功績は非常に大きかった。かもめにとっての本来の生き方というものに対し大きな提案を送りつつ、彼自身が見本となっていったわけである。

孤独に対する生き方において、かの剣豪である宮本武蔵の生き方にも共通する面がある。戦国時代において、ひたすら強く生き抜くことが大事であると考えていたもの、戦乱を終えた世の中において、彼は悪戦苦闘しながらも剣から筆へと変えることにより、「五輪書」を書き記すことにより、自らにおける生き方、考え方を書き残していった。今を生きる我々に対し、孤独において、いかに自らの道を究めるべきであるかというわけであり、リチャード・バック氏の投げかけたメッセージ性は非常に大きい。孤独だけではなく、全体主義に立ち向かうべき強い気持ちでなくてはならないという面では非常に大きな処世術の一つであるといえる。