あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 司馬遼太郎

司馬遼太郎国盗り物語・三」(新潮文庫)

 

国盗り物語(三) (新潮文庫)

国盗り物語(三) (新潮文庫)

 

 

 三巻目では織田信長と斉藤道三を中心とした物語であり、群雄割拠の中で生きる登場人物の人間臭さが強く描かれている。信長とお濃のやりとりを例に挙げれば、信長のあっけらかんとしたうつけ姿を司馬氏による人間臭さを加えることにより、歴史のリアリティーが感じられるのである。これがかの織田信長なのかと思うくらいの表現力であり、司馬氏は資料を丹念に読み、彼による創造でこの物語の信長公が出来上がったわけであり、道三の晩年に関しても同様である。マムシと怖れ言われ続けてきた道三に、人間の弱さを表現するにより、もうひとつの道三をリアルに想像させられる。勇ましい中の武将一人一人に心の強さや弱さを使い分けることにより、キャラクターの迫力は生まれる。実在人物の感情を同氏によるイメージで補うことにより、登場人物の独特イメージが活かされ、物語進行が引き立つ。歴史の流れを行くと、確かに司馬氏独自による創造性を活用すれば歴史の面白さも加わる上、歴史上の心理状況の一つとして理解できる面もある。歴史背景の描写に関しての観察力は、同氏の記者時代を活かしてきた証であり、一つ一つの背景が具体的に伝わる感じである。ただし、あくまで司馬氏本人による想像力が色濃く描かれているため、実際はどうなのかは一概に言えない。特に歴史観に関しては、意見が賛否両論に分かれ、戦前戦後状況下の日本に関しては厳しい意見も出ている。司馬遼太郎ファンにとって大変申し訳ないが、あえて書かせて頂くことにした。いわゆる保守系、リベラル系に受け入れられている一方で、漫画家の小林よしのり氏は「日本軍として参加したもの全てを悪人扱いしている」としての酷評もあり、小林氏は戦前に関する資料を隅々まで余すところなく読み、裏付けを十分にとってきているので、司馬史観は歴史すべてを語っているとは思えず、想像で描いたものであり、軍部と直接会話をしたわけでないという。

産経新聞記者の経歴を持つ司馬遼太郎氏は記者時代や作家活動において、世界をめぐり紀行文学も生み出している。歴史文学など多くの作品を生み出してきたのには偉大なるものである。歴史の真偽に関しては別であるが、歴史文学としては最高なものであり、司馬遼太郎氏の書き残したものには大きな観点を生み出した。一例として、斉藤道三を挙げておく。悪評だった彼を司馬氏の作品でイメージにより、悪の位置づけであった道三のイメージが大きく変わったというのである。歴史とはなんであろうか。これまでになかった人の評価を別の観点に置き変えることにより、一方では見えなかった大きな存在が見えるのである。人生というものが歴史の一部であるならば、人の見方が決して一方的ではないということを意識すべきであるといえる。