あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 柴門ふみ

柴門ふみ「恋愛物語(ラブピーシィズ)」(角川文庫)

 

 

 漫画家にして、小説・エッセイと積極的に展開する女流文学者としての柴門氏による短編小説である。十一作ものの作品がまるでどんな恋愛を楽しんでみようかというメニュー方式で作られている。高校生・大学生・クリエイター・デパート販売員といった立場の主人公を用い、彼女たちの物語展開を彼女らによる気持ちの場に立つことで、ハッピーエンドやバッドエンドをこの作品で感じ取ることができる。ただ、バッドエンドといえども、別れのシーンなどはすべてが決して悪い終わり方ではなく、女性として前向きにならなくてはいけないという気持ちへの切り換えや、出会えて感謝しているという女性の「ちょっぴりときめく経験」がこの作品に登場するような女性たちにエールを送るとともに、新たな恋の活路を与えているように思える。

 「夏休みまで」という作品で、とても傷つきやすい夏実というキャラクターには、男性としての小生にも、気持ちが通ずるような部分を感じ取ることができる。相手に対する木本をうまく表現できない彼女に大きなプレッシャーと片思いの異性に対する想い、それでも彼女は不器用ながらも彼女としての想いを伝えている。夏実の不器用な頑張りにほめたたえたい気持ちである。彼女の強いときめきにより、今後はどんな大人になるのかを期待させるように思え、同時に決して小さく虚しい人生で終わってほしくない気持ちである。現代社会における繊細な性格を持つ人というのは、今や男性にも表れており、小生もその一人としている。繊細な人はもっと開放的に行動すべきだと思う。女性だけでも男性だけでもない。負の部分はどこかで補う必要があるのだが、個々の判断で、あれこれやれ、これをやるべきだろ、と強い口調で人生を狂わせる人たちがいるが、彼らの言葉を決して鵜呑みしてはいけない。自分自身で決めるべきを他人によって狂わされたら元も子もない。

 先も触れたが、柴門氏は多彩な恋愛観・恋愛論をもっており、漫画や小説等の作品で彼女の創作力が活かされている。この恋愛物語は初期に書かれた作品である。短編仕立てではあるが、彼女の世界観が至れり尽くせりと余すところないものである。この作品を読んで世の男性たちもよんでみてはいかがであろうかと思う。女性の気持ちをなかなか理解しがたいと思うなら、少しなら女性の心理を勉強できると思う。

人物・加那子 薫子 夏実/LOVE PIECIES