あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1 安田均・山本弘

安田均山本弘ラプラスの魔」(角川スニーカー文庫

 

ラプラスの魔―ゴーストハンター (角川スニーカー文庫)

ラプラスの魔―ゴーストハンター (角川スニーカー文庫)

 
ラプラスの魔 (角川文庫―スニーカー文庫)

ラプラスの魔 (角川文庫―スニーカー文庫)

 

 

ラプラスの魔

 二十世紀のアメリカのとある館を舞台にした物語である。世界からこの小説はもともと安田均氏によるパソコン・ロールプレイングゲームを題材に小説として作られたものであり、登場人物の個性もさまざまである。幽霊屋敷で出会う仲間たちとの葛藤や友情と兼審査が大きくにじんで見える。女性ジャーナリストであるモーガンの活躍ぶりが大きい。登場人物の主人公としての彼女、凛とした顔立ちのキャラクター性に浮かぶ能力には、冷静な強い決断力や反骨精神、ジャーナリスト魂といった個性が強い。故に、物語の進行をうまく引き立たせ、登場人物とのシチェーションにおいても、彼女の活躍が引き立っている。時折、彼女に繊細さを持たせることにより、女性本能をくすぐる狙いも見え隠れしているように感じる。彼女の感情による明暗のバランスが非常にとれており、館に潜む不気味な存在に立ち向かう彼女の場面がとても迫力的に感じるわけである。方や、ブラックウッドの人格にはいかにも二十世紀前半における白人絶対主義の風格を持っており、「自称霊媒師」のオーガストのひ弱さも不気味な館において、何とも哀れな存在と言える。仲間に疎まれ、魔の恐怖に陥るも弱音を吐き、最後までもすべてに否定されたことには、言葉にならない。彼の存在が、一から十まですべてにおいてお荷物存在であったわけである。とはいえ、キャラクターの個性を活かしていることには変わりない。この冒険における仲間たちとの出会いは実に儚いものである。物語の進行によっては悲劇的なもの、一言では言い切れない恐怖と悲しみ、それらの要素を含んでいるのを考えると、カタルシスな一面も持っている物語と言えよう。