あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1  三島由紀夫

三島由紀夫潮騒」(新潮文庫

 

潮騒 (新潮文庫)

潮騒 (新潮文庫)

 

 

 「潮騒」というだいめいから、この作品の中でイメージするのが、単に海を連想するのみならず、主人公の新治と初江、二人の出会いから生まれてくる恋愛感情によるものである。初江という少しあどけなさそうなのか、そんな彼女の些細なしぐさ、同じ空気に彼の心から愛情を湧き上がらせるものを感じたのである。嵐の中で、さえぎられたはずの炎を彼が精いっぱいに飛び越えてまでのことが大きな愛と証明されたのは間違いない。二人の愛が潮のごとく激しく共感し、嵐までもがまるで二人の愛と共鳴するかのごとく、二人に成長の道を一歩踏みしめさせたといえよう。この愛が生み出したものは非常に大きい。後からうごめくゆがんだ性格の男による嫌がらせが襲いかかろうとも、自然の嵐がと襲い掛かろう、決して二人はめげることはなかった。もともと真正直に生きてきた彼にとって、これまでに出会ったことのなかった愛というものを初江という少女から受けた愛の力は非常に大きな存在と言えよう。その愛をはぐくみ、たとえ弱音を吐くことがあっても、必ず二人をさせてくれた人たちの存在も忘れてはならない。この愛が二人だけでなく、周りの人たちの信頼を築きあげた証としても言えよう。この作品を読んでみると、いささか勧善懲悪的な恋愛小説の印象を感じた。また、三島氏本人による自然表現となる島の様子、住民生活の様子といったものに対する描写力はとても鋭い観察力である。会話の中にある関西弁の表現もまたきれいな仕上がりである。いかに美しい自然に、二人の恋愛の誕生と愛のもたらす正と負の出来事を、同氏の力がいかに波木井されているかを感じ取ることができる。

 三島由紀夫氏と言えば、市ヶ谷駐屯地における割腹自殺をした作家で印象的である。二十年前近くになるが、あるテレビ局が同氏の自殺を放送した時があったが、氏の戦後日本社会への悲観を関係付けていなかった記憶がある。愛国的思想の持ち主である同氏にとって、あの割腹自殺で訴えていたものは戦後日本の堕落に陥る姿を見るに堪えがたかったからであるといえる。この変わり果てた日本の姿を他界した同氏としては、非常に情けないという言葉しか浮かばないという所であろう。