bungaku museum 1 宮沢賢治
宮沢賢治全集〈5〉貝の火・よだかの星・カイロ団長ほか (ちくま文庫)
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/03/01
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
どこにも行き場のないという一羽のよだかの話である。彼は周りから疎まれ続け、鷹に脅されるという日々に耐え兼ね、絶望していたという面においては、我々人間においてもどこかに負い目を感じていることは感じているはずである。作者にとって、よだかの生活環境というものは人間より厳しいと認識したうえで、負い目を感じたよだかをイメージし、成り立ったと思う。人間には富がある、決まりがある、一方で動物界においてはすべて弱肉強食であるから、ひ弱なよだかはまともに生活など不可能である。この弱い立場において、宮沢賢治氏が主人公という視点に置くことで、弱いよだかがいかに変わっていくのかを表現していると思う。お日さまからのアドバイスで夜空の星に尋ねることに決めたことにより、彼にとって藁にもすがる想いであろう。結果は実らず、疲れ果ててしまう。それでもよだかは飛び続け、やがては寒さによって力尽きてしまうが、星となって燃え続けている。よだかにとって、夜空の中が希望がある、そう信じて彼は我が身を犠牲にしてまで、高く飛び続け、寒さという刃にも負けず、自らの感覚がなくなっても彼は最後まで飛び続けることに専念したのである。落ちていく彼にとって、最後まで飛び切ったことで本望であったといえる。退廃した生活よりは、自らが何かを見出だすことで、彼の中で何かが芽生えたであろう。
人物・よだか/YODAKANO HOSHI