あーとこみにてぃー@藤岡宣麗

マルチクリエイターの藤岡宣麗による作品発表です。皆様に楽しんでいただけるような投稿にしていきたいと思ってます。

bungaku museum 1スティーブン・キング

スティーブン・キング「キャリー」(新潮文庫

 

 

思春期を迎えた少女であるキャリー・ホワイト。彼女の手にした力というものは実に恐ろしいものであり、彼女はほかの人より相当なデリケートな面は非常に強い。彼女の思う物事はすべてネガティブであり、彼女の描いた詩がイエス・キリストに対しても自らにおける悲しみを訴えるという気持ちはよほどの深刻で、不遇な生き方を余儀なくされた証拠であるかがわかる。狂信的な両親のもと、挙句の果てにはいじめを受けて、すでに絶望の道を歩まされている彼女に、あの恐ろしい能力である。キャリーの生き方からしてみて、全てが最悪という結末で人生を終え、さらには地獄へ行くというものとは非常に哀れなキャラというべきである。幸せがきたと思ったら全てが幻想という出来事は、彼女の心や尊厳を大きく傷つけた。この裏切りが彼女に人間の心を捨て、悪魔となったわけである。舞踏会そのもので彼女に暖かい光を与えるべきであったが、いじわるの度が過ぎた彼らは自分たちの罪悪感を顧みず、彼女に更なる悲痛な赤い辱めをかぶせてしまった。人間を捨てた彼女による「天罰」が下される。彼女の気持ちを知らない悪ふざけた彼らはいつの間にか即時に死刑執行を受けることとなるのには無理もない。因果応報とはこのことかという教訓を思い知らされる。彼女の最悪な姿には「阿修羅」のようなイメージを浮かばせてくれる。ただ、すべて同じとは限らないもの、すべてを破壊するという面では共通性はある。もし、キャリーがまともな両親のもとで、育っていれば、悪魔になっていなかったであろう。

この作品はスティーブン・キング氏のバイト経験からヒントに描かれた処女作である。作品としては主人公であるキャリー・ホワイトの不幸を皮切りに彼女の何かが壊れていくというイメージを持たせる描写がすごい。キャリーの視点だけではなく、キャリーの関係者からの視点、メディア視点からの視点を想像した部分もあり、まるで実際の出来事のように描かれたように感じる。また、女性の持つ辱めの一面を生かしたホラー仕立てとしては、キング氏による想像力の壮大さも感じさせる。この作品から同氏のホラー作品が多く生まれたわけである。漫画でたとえると、楳図かずお氏という所である。猟奇的、暴力的な面では非常に大きな共通性を持っている。同氏のホラー作品がどんな形で出るのか期待度が大きいところである。